カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.9.11(月) 『凍りついた香り』

珍しく娘が幼稚園を休むと言い出したので休ませる。
「お母さんと買い物に行きたい」というのが理由だった。
妻が娘を買い物に連れていく。
私は私で買い物に行く。
娘にコグミを買って来てと頼まれたので、買って帰った。
妻と買い物に行った娘は、自分でもコグミを買っていた。
どんだけコグミ好きやねん。

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主人公の「私」が、自殺してしまった調香師の恋人と初めてデートをした日のことが語られる。
恋人の弘之は一時間半の遅刻をしてやってくるという場面だ。
「私」は待ち合わせの喫茶店を出て帰ろうと駅で切符を買ところで、弘之に肩を叩かれる。

遅れた理由は何だったろう。そんなことはもう忘れてしまった。礼儀正しく彼は謝った。調香室のガラスの内側から、両手でそっと言葉を差し出すように謝った。
「喫茶店に駆け込んだら、もう姿が見えなかったから、駅に向かったんだろうと思って追い掛けたんだ」
「どうして間に合うって、分かったの?」
「レジに君の香りが残っていたからさ。まだ遠くには行ってないと思った」
「私の香り? それがあなたに分かるの?」
「もちろんだよ」
目の前にいなくても、彼は私を見つけてしまう。そのことがどんなに私を幸福な気持ちにしたか。

引用:小川洋子『凍りついた香り』

初対面の人の職業がわかったり、電車の中で隣り合わせただけで朝食のメニューがわかったりすることもあるなど、鋭い嗅覚の持ち主として弘之は描かれる。

「まるで予言者みたいね」
「予言者なんかじゃないさ。だって未来は予測できないからね。香りはいつだって、過去の中だけにあるものなんだ」

引用:小川洋子『凍りついた香り』

今日、私が作ったボロネーゼなどいとも簡単に見破られるのだろうなと、そんなことをぼんやり思う。


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