カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.8.14(月) 『絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか』

『絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか』。
タイトルからもう面白いやん。
いや確かに一列に並んでる。

このような絵本の構図は、あまりに見慣れているため、一見するとごくありふれた特別な意味などないものと思われるかもしれません。しかし、この構図こそ、絵本作家が作りだした他に類のない絵本世界を象徴する構図なのです。そして、子どもや私たちに、ほかのメディアでは実現できない生命的な喜びをもたらす絵本の秘密の構図なのです。

引用元:矢野智志・佐々木美砂『絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか』(勁草書房)

さらに面白いのは、この構図を考えることが「人間とは何か」を明らかにするろいうことが「はじめに」で提示される。
絵本の構図がどうやってそんな大きな問いにつながっていくのか、楽しみすぎる導入だ。
続く第一章も面白い。
絵本、というより子どもたちが喜ぶ物語には「行って帰る」構造があるというところから論じられる。
絵本を論じるに当たっては、この物語的な「行って帰る」構造では不十分で、理由として絵本の特性上、主体としての主人公の経験を表現する媒体ではないことがあげられる。
絵本を物語が語られることに主眼を置いて考えるより、イラストと物語によってつくられる世界として、「空間的なプロセス」に力点を置いてみることでその本質に近づく、というようなことが書かれている。
もうひとつ面白いテーマとして、なぜ絵本には動物が登場するのか。その理由は単純に子どもが喜ぶからであるとしたうえで、「なぜ動物が登場すると子どもは喜ぶのか」という新たな問いへと続き、説明されていくようだ。
一章を読んだだけでも期待値の大きな一冊だ。

さて、今日もジョギングをしたわけだが、台風の影響か風が強い。
私は絵本の動物になった気持ちで一列になって走った。


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