カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.6.20(火) 『とりあえずお湯わかせ』、そして私はあら汁を作る。

ハマチのあらが手に入ったので、あら汁を作る。
まずは下処理。
ボウルに入れたあらに塩を振って放置する。
15分後、ボウルに溜まった水を流す。
熱湯をかけたら流水で洗い流す。
身に付着した血やぬめりを落として完了。

鍋に湯をわかし、あらで出汁を取る。
あとは味噌を溶くだけ。
これで完成。
ネギをちらし、さんまのフライ、ポテトサラダと共にいただく。
もう何も言うことはない。
黙って本を読むだけだ。

柚木麻子『とりあえず湯をわかせ』。
著者、初めての出産後4年間の奮闘を綴ったエッセイ。
食や料理を中心に、日常から社会問題までおもしろおかしく、そして切実な言葉で語られる。

このエッセイ集は、私が自分なりに頑張ろうとしてはくじけて怠けて落ち込んで、でも大抵何か食べて新鮮な感動を得て、また頑張ろうとするその繰り返しの歴史なのだが、明らかに私の意識が少しずついい方向に変わっていくのをわかってもらえると思う。

「はじめに」より

そうか。人気の小説家だって私たちとおなじような悩みや問題を抱えるひとりの人間なのだと当たり前のことを気づかせてくれる。

最初に悲しいと書いたが、この悲しみは、読者さんが面白がってくれることで、昇華されるかなと思っている。私にとって書くことは常に救済だ。こうやってタイトルにしないとすぐに忘れるが、どんな時もとりあえずお湯を沸かせれば、あなたも大丈夫。

「はじめに」より

著者にとって書くことが救済ならば、読者にとっても読むことは常に救済だ。
本を読んで湯を沸かして、湯を沸かして本を読んで。
そうやって日々は過ぎていく。
日常とはやかんから出る湯気みたいなものだ。

タイトルの「お湯わかせ」は著者の母の教えということだ。
曰く、何もてにつかない時はお湯を沸かせばいいのだと。
お茶を飲むなり、野菜を茹でて一品つくるなりできる。
最低でも加湿はできると。
停滞を脱するとっかかりをもっともハードルの低いところでつかめという意味の家訓らしい。
感動を覚える教えじゃないか。

湯を沸かして、あら汁を作って良かったと心から思えた。


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