カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2024.2.28(水)

家に忘れ物をしていたので、昼間に取りに帰る。
自転車で再び店に向かっていると、同じく自転車で前を走る小学生男子が派手にずっこけた。
縁石にぶつかったような感じでそのままハンドル操作がままならなくなり、ずでーっと。
見過ごすわけにもいかず、少年の救護にあたる。
少年は首付近を抑えながら痛がっている。
うーうーと苦しんでいるのでとりあえず声をかける。
みたところ外傷はない。
救急車を呼ぶほどでもなさそうだが、首を痛めてる素振りもあるし、意識の状態を確認するためにも念のために聞く。
「救急車を呼んだ方がよさそうか?」
「いや、大丈夫」
「じゃあとりあえず、おうちの人に連絡するか?」
「うん」
「番号わかる?」
「うん」
「じゃあ電話かけるから教えて」
と会話しているうちに落ち着いてきたのか、「あれ、そこまでいたくもないかも」とけろっと。
ずっこけた衝撃で気が動転していたのだろう。
「ここ、なんかなってますか」
と耳の下のあたりを指して聞いてくる。
若干赤くなっている気もするが、傷やあざなどのレベルではないことを伝える。
「ひざのところ破れてるで」と言うと、ズボンのすそをまくる少年の膝には擦り傷ができていた。
「○○小?」
「うん」
「何年?」
「5年」
「遊びに行こうとしてたん?」
としゃべっていると、少年の同級生が自転車で現れる。
「○○、なにしてんの」と女子。
「あー、こけた」と少年。
「公園行くの?」
「あー、でもいったん家に帰る」
「ふーん、じゃあねー」
と言いながら女子は去って行った。

このへんでもう大丈夫だろうと判断し、少年に「気をつけるんよ」と言い店に戻ることにした。

しかし思うのは、危ういよなということだ。
倒れている少年とそこにいる大人。
傍から見れば、特にその一瞬だけを切り抜いてみれば、少年が事故の被害者で、私が事故の加害者にも見える。
見ようによっては事故をもみ消そうとしているようにも見えるよなと思う。
少年が落ち着いてきたからいいものの、気が動転しているうちに自分でもわけがわからなくなって、「この人に後ろから追突された」などとも言われようものなら、私はそうでないことを証明する術をもたない。
ただ単に少年が自転車でずっこけるところにたまたま居合わせた、第一目撃者なのだけれど、声をかけるのもリスクになりかねない。
これが少年でなく少女だったとしたら、このご時世ますます声をかけづらい。

事故現場で人工呼吸をするかしないかの論争をしばしばみるけれど、それと同じような種類の逡巡がある。
だからと言って目の前の困っている人をスルーできるほどの胆力もない。

少年が無事でよかった。