カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.7.30(日) 「イタリア風」庄野潤三

髪を切る。
美容師さんの履いていたジーンズの後ろのダメージ加工が激しい。
太股もふくらはぎもほぼ全見えみたいな感じだ。
「ずぼんめっちゃやぶけてるで」と軽いノリで言ってやろうかとも思ったが、相手は一回りも下の、しかも女性なので自重しておいた。
夏なので短めに切ってもらう。
イタリア風のショートカットだ。

庄野潤三の短編「イタリア風」を読む。
ニューヨークを旅行中の夫婦が、日本で知り合った知人のお宅を訪問するという話だ。
主人公の矢口には妻と二人の子どもがいる。
東京に暮らす一家は、冬休みに大阪の実家に帰省する特急列車の中で、外国人の夫婦と隣り合う。
アンジェリーニ氏とその夫人はアメリカ生まれのイタリア人だ。
アンジェリーニ氏は日本に来るときに夫人と結婚し、大学で英語を教えていたが、翌年、ニューヨークに帰るということであった。
その前に日本の各地を回る旅行中に、矢口一家と乗り合わせたという恰好だ。
その後、矢口とアンジェリーニ夫妻は一度、東京で食事をした。
アンジェリーニ氏と会うのはこれきりだろうと思っていた矢口のもとに、アンジェリーニ氏から手紙が届く。
ニューヨークへ来る際は連絡してほしいという主旨のものだった。
ニューヨークへ行く機会があった矢口は、アンジェリーニ氏に連絡を取り、会うことになって、滞在中のホテルに迎えに来てもらうところから物語が始まる。
こんなところだ。
アンジェリーニ氏の家を訪ねて、アンジェリーニ氏の家族とともに時間を過ごすという筋立てだが、これまたつかみどころのない話だ。
庄野潤三の作風がなんとなくわかってきた。
訪れたアンジェリーニ氏の家には、アンジェリーニ夫人はいなかった。
これがこの話のひとつのポイントになるのだが、庄野潤三の文学は引き算の文学であるのだなと理解した。


f:id:cafeaulait-ice:20230731002955j:image