カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.7.27(木) 「五人の男」

頭が痛いと本も読めない。
というか何もできなかったわけだが、本が読めるくらいに体調も回復している。
庄野潤三を読む日々が続いている。
今日読んだのは「五人の男」。
少し変わった構成の短編である。
語り手であり主人公の男が、これまでに出会った印象的な五人の男についてのエピソードが語られる。
隣の家に住む祈る男、バスの中で乗り合わせたカップルで、漢字のミスにより窮地を迎えている男、父の知人で話好きの太ったD氏、父の知人で元教え子のN氏、狩猟専門の雑誌で観た、ガラガラヘビに自分の手を噛ませる実験をした男。
それぞれのエピソードは興味をそそられる部分はあるし、巧みな描写で男たちの人柄もよく現れているが、どれも脈絡がない。
なんとなく先の戦争が影を落としているような雰囲気はあるが、ただただ並列に語られるのみだ。
だからなんなんだという感じだが、答えは提示されないし、答えなんてものはないのだろう。
このスケッチ風の短編の中に何を見出せばよいのか(見いだせるものがあるとすれば)、正直わからないのだが、決して面白くない訳ではない。
だけれどその面白さらしきものを言葉にしようとしてみても、上手くすくいとれない不思議な話だ。
病み上がりの私にとって、読書のリハビリにはちょうど良い読み応えであった。


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