今日も昨日と同じようなラインナップの読書。
毎日少しずつ読むスタイル。
『虞美人草』夏目漱石
p115~p150
地の文の情景描写がすごい。
I Love Youを月が綺麗だと訳すだけのことはある。
というかそれ以上の情感にあふれる書きっぷりだ。
燐寸を擦る事一寸にして火は闇に入る。幾段の彩錦を捲り終れば無地の境をなす。春興は二人の青年に尽きた。狐の袖無を着て天下を行くものは、日記を懐にして百年の憂いを抱くものと共に帰程に上る。
古き寺、古き社、神の森、仏の丘を掩うて、いそぐ事を解せぬ京の日は漸く暮れた。倦怠るい夕べである。消えて行く凡てのものの上に、星ばかり取り残されて、それすらも判然とは映らぬ。瞬くも嬾き空の中にどろんと溶けて行こうとする。過去はこの眠れる奥から動き出す。
日が暮れて、京都から二人の男が帰ろうとしている場面。
このあとも2ページにわたって描写が続く。
節が変わるたびにこれが続くのでなかなか重たいが、読ませる筆力に圧倒される。
『にんじん』ルナール
p52~p68
にんじんに対して嫌がらせをする母親にはまったく共感できないが、バターと卵の価格が高いことを嘆く気持ちはちょっとわかる。
「この家のやりくりをしていくのがどんなに大変か、あなたにはわからないでしょうね。あなたもきっと、料理を作るのにお金なんてかからないって思っているでしょうから。世間の男たちと同じように……。男の人たちときたら、バターの値段があがろうが、玉子が高すぎて手の届かない値段になろうが、どうでもいいことなのよ!」
卵の値段はいつになったら落ち着くのか。
『物語の作り方』ガルシア・マルケス
p152~p182。
ガルシアマルケスと脚本家たちは、45年の刑期を終えた老人が若返って復讐を考えるというストーリーについて議論している。
『父ではありませんが 第三者として考える』武田砂鉄
p48~p85
著者武田砂鉄が武田鉄矢に言及している箇所があった。
『差し出し方の教室』 幅允孝
p168~p242
後半、第二部に入る。
第二部は著者が関わった本のプロジェクトでの差し出し方に言及。
『別れの色彩』ベルンハルト・シュリンク
p57~p106
本作は「別れ」を題材にした短編集。
9つ収録されている短編のうちのひとつ「姉弟の音楽」を読む。
かつて親交を深めた車いす生活の友人とその姉から逃げるように海外へ留学した主人公の音楽家が、数十年後に彼らと再会し、当時を回想する物語。
どの人物の気持ちも痛いほど伝わってくる。
以上、なかなか読み終わる本がないのでしばらくこのラインナップが続きそう。