カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.5.24 (水)『象の皮膚』

小さい頃、ちょっとだけアトピーがあった。
ひじの内側と首の後ろに湿疹があり、痒かった。
症状で言えば軽度のものだったと思うが、それなりに嫌だった。
まず、痒いというその症状自体が嫌だった。
みんなにはないものが自分にはある。人と違うことが嫌だった。
人に見られるのも嫌だった。
幸いなことに、からかわれたりすることはなかったが、憐れみの目で見られているようで、かえってみじめな気持ちになった。
実際に「かわいそう」と言われるたびに、ますます気持ちは沈んだ。
心から同情してくれているのだとわかっていても、気持ちをうまく処理することはできなかった。
アトピーがあるだけで、そこから派生するあれこれのすべてが嫌だった。
健康診断で「アトピー性皮膚炎」と書かれることなんかも地味に心を削られた。
薬を塗っても良くなることはなかったし、軽い絶望を覚えていたのが小学生の頃。

大きくなって体力がついたらよくなるかも、という助言の通り、中学、高校と年齢を重ねるにつれて症状は緩和され、いつのまにかアトピーはなくなっていた。
今思えば軽かったのだと思うが、その症状と軽さとは関係なく、苦い思いだけはしっかりと自分の中に刻み込まれている。

今日、読み始めた佐藤厚志の『象の皮膚』はそのときの気持ちを思い出すのに有り余るほどだった。
書店で働く主人公、五十嵐凛の現在と幼少期の回想が交互に語られる形で物語は進んでいく。
凛は幼少期からアトピーに悩まされる。
級友どころか自分の兄や弟にまでひどい扱いを受ける。
ある日、凛は動物園でみた象の皮膚が自分の皮膚に似ていたことから、タイトルの「象の皮膚」ということらしい。
凛の場合、私と違って、成長するにつれ症状は悪化の一途をたどったということだから、読んでいるこちらも辛くなってくる。
まだ読み始めたところ。
読み進めるのにちょっと力の入る作品だ。

 


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