カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.5.25(木) いつだって電話のベルは

村上春樹の小説では、電話のベルが鳴ると何かが始まる。
大抵の場合、良いことではなく、主人公は混乱のなかに巻きこまれていく。
小さな子どもをもつ親にとっての電話のベルも同じだ。
良くないことの知らせ以外に電話なんてなることはない。

幼稚園のお迎えの時間が迫ってきたころ、妻の電話が鳴った。
娘の担任の先生からだ。
園庭で遊んでいる最中に泣き出して、どうやら腕の具合がよくないらしい。
3月で3歳になったばかりの娘は、自分の身に起きたことを他人に伝えられるほどの言語能力がまだ備わっていない。
いまは泣き止んでいるが、腕を動かそうとすると痛そうである旨の連絡だった。
妻がすぐに迎えに行き、帰ってきた娘は左腕が痛いと泣いている。
本人曰く転んだそうで、左腕をだらんとした状態から動かすのが難しそうだ。
打撲くらいですめばいいのだが、最悪、骨折ということもあり得るなとこのとき思った。
こんな小さな体に細い腕の娘が、痛い痛いと泣いている。
それだけでこちらも泣けてくる。
木曜午後は休診のクリニックが多いため、開いているところを探すのに少し手間取る。
一刻もはやく娘を解放してあげたいのに。
午後診開始時間と自宅からの距離との兼ね合いから、なんとか見つけたクリニックに妻が娘を連れて行く。

結果から言うと、肘の脱臼だった。
良かった。
帰ってきた娘はすっかり元気になっていた。
帰り道で明日の遠足で使うリュックサックを買ってもらいごきげんな様子だった。
クリニックの先生曰く、転倒したくらいで脱臼することはないので何かしら引っ張ったりという力が加わっていると思うという所見をいただいた。
よくよく聞いてみると、娘も引っ張られたようなことを言っているが、誰と遊んでいたのかもわからないし、どこまでが本当かもわからない。
そもそも娘はおともだちの名前も認識できていないようだし、悪意があったようにも思えにくいので、事実だけを幼稚園の先生には報告した。
幼稚園で加入している保険の対象になるかもしれないということだった。

なによりも明日の遠足に行けそうなのが良かった。
買ってもらったばかりのリュックサックに、持っていくおやつを何度も出したり入れたりする様子を見ていると、また泣けてきた。