カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.10.19(木) 『いい子のあくび』

朝起きた時から頭が痛い。
酒も飲んだ翌日のようなぼんやりとした頭痛。
昨晩、寝落ちしてしまったせいで枕の調整に失敗した、つまり高すぎる枕で寝たせいで血行が悪くなったのかと暫定的に結論付ける。
枕が無くてもダメだし、高すぎてもダメ、厄介である。
ボケっとした頭で一日を過ごす。
幼稚園に娘を迎えに行き、帰り道、遊具での遊びに付き合う。
彼女をみていると、長男、次男よりも身体能力が高そうな気がする。
帰って少し昼寝をすると、なんとなくすっきりした気がする。
本の読めるくらいには、頭の中がはっきりとしてきた。
高瀬隼子『いい子のあくび』を読む。
都内で働く女性会社員が主人公の、生活の中で感じる「割に合わなさ」を描いた作品。
「高瀬隼子らしさ」を感じる設定だ。
芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』同様、主人公は静かに憤っている。

こんな電車に乗らないと会社にたどり着けないなんておかしい。こんなのは割に合わないと思うのに、他に方法がないからこうするしかない。と、いうのさえうそだ。本当は、電車の乗らないで済むよう職場の近くに住むことだって、あと一時間早く起きて歩いて出勤することだって、選択肢としてはある。だけど、職場のある都心近くは家賃が高いし、毎日一時間早く起きて歩く体力なんてない。こんなふうに自分に言い訳をしては、言い訳じゃなくて現実問題としてそうなだけだから、とこれもまた自分に言う。

出典:高瀬隼子『いい子のあくび』(集英社)

主人公の「わたし」の同僚に桐谷さんという先輩が出てくる。
表面上は同僚としていい関係であるように振る舞う「わたし」だが、桐谷さんのことを嫌っている。
どうしても桐谷さん的視点に立ってしまう私は心苦しくなってくる。

 左隣からコーヒーのにおいが漂ってくる。いいにおいだと思うのは最初だけで、桐谷さんが一口でも飲んだ後は、コーヒーのにおいの中に桐谷さんの唾液が蒸発した成分が含まれているような気がして、気持ちが悪い。
 コーヒー飲めないけど、においだけ好きなんですよ、と前に言ってしまったせいなのか、桐谷さんは右側にマグカップを置く。においだけお裾分け、ってことだろうか。コーヒーがあのどす黒い見た目通り毒だったらいいのに。

出典:同上

桐谷さん、もう余計なことはしないでくれ。
嫌われているかもしれない可能性を、自覚してくれ。

前作に続いて『いい子のあくび』も、さらっと描かれる黒い部分にぞわぞわさせられる。


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