カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.8.27(日) 『妄想radio』

月が~出た出た~
月があ出たア、よいよい

近所の祭りで盆踊りをやってるのだろう。
夕食後、コーヒーを淹れ腰をおろしたところで、遠くから炭坑節が聞こえてくる。
日中は厳しい暑さが続いているが、日が暮れて以降は涼しくなってきた。
窓から外を見上げると、レモンのような月が浮かんでいる。
夏は夜。月のころはさらなり。
小学校の夏休みも残すところあと一日。
夏の終わりはそこまで来ている。

桜木紫乃のエッセイ『妄想radio』を読んだ。
氏のことは小説以外まったく知らなかったのだが、小説のイメージと本人のイメージが全然違うのだなということがわかった。
同じことを多くの人が思うらしく、エッセイの中でも言及されていた。

構成としては前半にエッセイ、後半に架空のスナックを舞台にした対話形式の創作「妄想radio」が収録されている。
最後に各出版社の担当編集者による座談会も収録されていて、なかなか面白く読めた。
あとがきに座談会の様子を受けて書かれた一節を引用したい。
なんとなく雰囲気がわかっていただけるだろう。

新人賞から二十余年、ほとんど隠していない覆面座談会で、馴染みの編集者の本音(だよな)を目にする日が来るとは思わず。
「温かい励ましとかあったりして、思わず泣いちゃったらどうしよう」という思いは杞憂でした。パンツを見せて歩いていたり、ハナクソだの屁だのという話題では彼らを翻弄し、ときどき差し歯やスマホを落としながらコマネチを決めるという、馬鹿な小説家が浮き彫りに。

いいエッセイを読んだときは、良い感触が何日も続く。
この本はそんな類の本だと思う。


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