カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.8.8(火) 「夜の樹」トルーマン・カポーティ

小学校時代の友人4人のLINEグループがある。
メッセージのやり取りが発生することはほとんどない。
だけどなぜかここ1~2年くらい、誰かの誕生日には祝福のメッセージが行き交う。
朝、おめでとうのメッセージかスタンプが投稿され、残りの二人がそれに追随する。
誕生日の当人は、ありがとうと返す。
ときどき小さなボケが差し込まれる。
ただそれだけのやり取りが年に4回ある。
グループLINE自体ははずっと前からあったのに、ある日突然、こんなことが自然発生的に始まったのがおもしろい。
今日は友人Hの誕生日だった。

野暮用で役所に出向く。
待っている間にカポーティ「夜の樹」を読む。
19歳の女子大生ケイが、寒い冬の夜に汽車の乗りこむところから物語は始まる。
ケイは車両の一番端のボックス席に、ひとつだけ空席をみつけ座る。
向に座る不気味な中年の男女のうち、女の方が話しかけてくる。
酒もすすめてくるがケイは気乗りがしない。
しかし、女がしつこくすすめてくるので、しぶしぶ付き合うことにする
二人は旅をしながらショーをして生計を立てていると言い、ケイにお守りを買ってくれと頼んでくる。
だんだんと嫌気がさしてきたケイは逃げるようにデッキに出る。
刺すように冷たい外の空気の中、木々の連なりをみる。

この地をするのは初めてなのに、汽車は、不思議なほど身近に感じられる景色の中を走っていた。亭々たる木々の連なりが、悪意を秘めた月光に青白く染まった霧に包まれ、両側に切れ目なく続いている。上に目を向ければ、空はあくまでも果てしない群青色で、そこを埋め尽くした星々の中には帰りかけているものもところどころにあった。汽車のエンジンが吐き出す煙の波が、霊魂のかたまりのように、長く尾を引いて流れていく。デッキの片隅では赤い灯油ランプが色鮮やかな影を投げかけていた。

最終的にケイは女からお守りを買うことになるが、そこに至るまでの心情の描写を読んでいるといたたまれなくなる。
汽車の外の空気のような冷たさが、文章から迫ってくる感じがするのだ。

しかし、小説の中とは打って変わって、現実の世界は暑い。
夜になっても暑い。
暑い中、今日も走る。
夜を駆ける。

 


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