カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.8.4(金) 「静物」庄野潤三

庄野潤三静物」を読む。
これがまた難しい。
つかみどころがない。
とある家族の話。
父親がいて母親がいて、子供が三人いる。
女の子、上の男の子、下の男の子。
五人家族の話が18の章立てで語られる。
最初は、上の男の子の希望で釣り堀に行く話から始まる。
次は、吃音持ちの医者と父親が診療所で何か話している。
その次は、父親が新聞でみつけた黒人の女の子が風で亡くなったという記事の話。
という具合に、断片的なエピソードが、脈絡なく(脈絡がなさそうだ)並べられる。
それぞれのエピソードはそれなりに面白いし、なんとなく含蓄があるような趣がる。
しかし意味を考えてみても、よくわからない。
別のエピソードとの関連も特にあるようには感じられない。
一見、幸せな家族の話が連なっているようにも思えるが、全体を通じてどこか不穏な空気が流れているようにも感じられる。
夏の夜にみる夢のようで、そのつかみどころのなさがクセになる。
静物画をみているような読書体験でもあった。


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