カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.11.4(土) 「ディスカス忌」

朝、買い物に行きたいと娘が言うので、スーパーへ行く。
お菓子を買って、ストック用のカップラーメンを買う。
アーニャパッケージUFOをふたつと、カップヌードルをしょうゆとシーフードをひとつずつ。
娘は満足したようで、家に帰ると買ったばかりのお菓子をさっそく食べ始めた。
スーパーで半袖だったのは娘だけだった。

10:30頃、これまた半袖半ズボンの長男と出かける。
来年春に廃線が決まっている、瀬野のスカイレールに乗りに行くことを約束していたから。
スカイレールに行くのは一昨年の夏以来、2回目だ。
おそらくこれが最後になるだろう。
見納め、乗り納めだ。
JR瀬野駅と高台の住宅団地を結ぶスカイレールの勾配にちょっとビビる。
そして住宅の多さにもちょっとビビり、ニュータウンの在り方を考えるともなく考える。
スカイレールを降りたところの広い公園までの道中、写真を何枚か撮る。
公園にある遊具で長男が遊んでいる間に、私はベンチで本を読む。
小山田浩子ディスカス忌」。
なんともつかみどころのむずかしい。
主人公の「僕」が友人の斉木と、斉木の友人である浦部の家を訪れたときのことを回想する話だ。
熱帯魚屋を道楽的に営んでいた金持ちの浦部に、子どもが生まれたということで訪問したときのエピソードだ。
ディスカスという熱帯魚の遺伝子と形状の関係を研究している浦部は、オスとメスのつがわせ方をコントロールして観察していると言う。
その話を聞いて、たくさんのディスカスの中から夫婦にする組み合わせをどうやってコントロールするのか不思議がる「僕」に浦部が言う。

「人間だってそうだろう」
浦部君は湯呑を片手に立ち上がって、若いディスカスらの水槽の前に立った。
「学校で出会う、職場で出会う、店で出会う、どれだって、適当にたまたま集まっている個体が、その中で相手を選んでつがうんだ。別の集団にいたら別の相手がいただろうに、そんなこと考えもしないでその団体の中でつがうしかないだろ。団体を、街や、九国と考えてみろよ。そこに自分の意志は反映されないだろう。恋愛結婚なんて、君、そう思っているだけで実際は不自由なもんだ」

小山田浩子ディスカス忌」

たしかにこれはほんとうにそうで、いる場所が違えばその場所で別の恋愛をしていただろうし、その可能性は常にパラレルに開かれている。
だからこそ、恋愛関係に発展した人を運命の人と言うことも可能だし、偶然だとも言える。
いずれにしても、長男とスカイレールに乗って今ここにいる自分は、あのときの出会いがあったからだという不思議を、広い公園のベンチでぼんやりと考えていた。


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