カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.4.4(火) あんぱん、チョコあ~んぱん、『ささやかだけれど、役に立つこと』


お菓子はブルボン。
アルフォートルマンド、シルヴェーヌ、味ごのみ、チョコレートにビスケットから米菓まで、挙げだすとときりがないほど名作だらけのブルボンを推している。
なかでも私の一押しは、チョコあ~んぱんだ。
一口サイズの丸いパンに、ソフトなチョコレートが入っているかわいいお菓子だ。
とんでもなく美味しい。
パッケージに描かれたおじさんはいつも優しく、わたしたちに美味しいチョコあ~んパンを提供し続けてくれる。

公式webサイトの開発秘話によれば、当初は長い間みんなに愛されているあんぱんを自分たちもつくりたいとの思いから始まったそうだ。
普通のパンではつまらないと考え、試行錯誤の結果、本物のパンと同じようにイースト菌を発酵させて焼いたお菓子となった。
それだけで満足しなかった開発者たちはさらに、中身がチョコなのであんぱんではない。
「あーんぱん」にしよう。いや、口をあ~んと開けるイメージで「あ~んぱん」だ!
こうしてできたのがチョコあ~んぱんなのだそうだ。

これを最初に食べたのは、私がまだ保育園に通っているころだった。
以来、三十数年愛好している。

 

そういうわけで、4月4日のあんぱんの日にチョコあ~んぱんを食べようと思い、昨日のセブンイレブンに行った。
なぜわざわざ遠回りをしてまでこの店に行ったかと言えば、昨日の接客をもう一度体感したいという思いもあった。

 

昨日はあまり注意を払っていなかったが、店にはさまざまな手書きのPOPが貼ってあった。
レジ横にはあんパンが美しく積まれていて、他にも推してる商品がつい手に取ってしまうように並んでいた。
全国1位は伊達ではないのだなと思い知らされた。

 

菓子コーナーからちょこあ~んぱんをひとつ取り、レジへ向かう。
昨日とは違う店員さんだ。
ピッとバーコードをスキャンしながら軽やかな笑顔で言ってくる。
「こちらのあんぱんはどうですか。今日はあんぱんの日なんですよ」
もちろん僕は知っている。
今日があんぱんの日だということも、この店があんぱんを勧めてくることも。
そして私は今日、その勧められたあんぱんを手に取るということも。
ちょこあ~んぱんとこしあんのあんパンの入った袋をぶら下げた私は、気持ちの良い「ありがとうございましたー!」を背中で受けながら、店を出た。

「よかったら、あたしが焼いた温かいロールパンを食べてください。ちゃんと食べて、頑張って生きていかなきゃならんのだから。こんなときにはものを食べることです。それはささやかなことですが、助けになります」

これはレイモンド・カーヴァーの短編「ささやかだけれど、役に立つこと」でパン屋の主人が、主人公夫婦にかけるセリフだ。
物語は母親が誕生日の息子のために、パン屋にケーキを注文するところからはじまる。
ところが誕生日の当日、息子は登校中に車にはねられる事故にあう。
病院に運ばれた息子は意識不明となり、やがて死を迎える。
パン屋はその事情を知らないまま、焼いたケーキを引き取りに来ない夫婦に催促の電話を何度もかける。
夫婦の悲しみは、パン屋への怒りと転化してしまい二人はパン屋へ向かう。
そこで互いの事情を知ることとなり、パン屋は夫婦にパンを食べさせる。
パン屋のセリフが心に染み入る。
悲しく重たいが、温かさの残る短編だ。

 

わたしたちの生活は単調だったりたり、とてもつまらないものに思えたりする。悲しいことや苦しいことが続いたり、ともすればなんのために生きているのかわからなくなってしまったりする。
そんなときにいつも思い出すのはこの短編だ。


私たちにできることは小さなことかもしれない。
たとえば、パン屋でパンを買ったり、ふだんは買わない店のおすすめをそのまま買ってみたり、時にはコンビニの店員としゃべってみたり。
しかし私たちの生きる意味を支えているのは、そんなほんのささやかなことなのかもしれない。