カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2024.2.23(金) 再会する。2024年のサンフレッチェ男

2008年の4月、大学を卒業し新卒として入社した会社で私が配属されたのが広島支店だった。
東京での1ヶ月にわたる新入社員研修を終え、縁もゆかりもない土地で社会人生活がスタートした。
初めて広島支店に出社した時のことを今でもよく覚えている。
朝、遅刻しないようにとかなり早く家を出た。
あまりに早く着き過ぎたので事務所の近くのドトールでコーヒーを飲んで出社した。
ドキドキしながら出社するなり、同僚となる支店の方たちに歓迎のドッキリをしかけられたりもした。
朝礼で自己紹介をし、私に与えられたデスクで業務が始まった。
そのときわたしの目の前に座っていたのがTさんだ。
Tさんは地元採用の一般職として働いていて、営業事務全般を担当していた。
私よりも一回り以上年上の先輩社員だ。
私の最初の仕事はPCの設定だった。
PC設定のサポートをしてくれたのはTさんだ。
それから私はTさんにいろいろとお世話になった。
業務面だけでなく、この支店やこの会社で働いていくうえでの給湯室的あるいはタバコ部屋的な情報をTさんは教えてくれた。
いろいろと迷惑をかけたこともある。
嫌な顔せず(心のうちはわからないけど)いろいろと教えてもらった。
お姉さん的先輩だった。
私は4年間、広島支店で働いた後転勤になった。
それが2012年の3月。

そして転勤先の福岡支店で1年勤務したのち、私は転職した。
退職する際、広島支店にも連絡して、お世話になった方たちに挨拶をした。
Tさんと言葉を交わしたのもそれが最後だった。
2013年3月末のことだ

なんの因果かわからないけれど、その3年後の2016年に転職で私は再び広島に戻ってきた。
それからなんだかんだで7年務めた会社を2023年の1月に辞めて、本屋を始めた。

この数年で私はJリーグサンフレッチェ広島のファンになった。
ファンクラブに入会し、昨年はシーズンチケットも購入し、ホームゲームのほとんどすべてに足を運んだ。
その中で印象に残っていることがある。
サンフレッチェのホームゲームでは、ハーフタイムに、入場時に配布されたカードを使っての抽選大会がある。
いくつかの景品が用意されていて、運が良ければ何かがもらえる。
さらにファンクラブ会員、シーズンチケット保有者の中から特別に選手直筆サイン入りのグッズも当たったりする。
昨年の夏ごろ、選手直筆サイン入りグッズ当選者のなかに、Tさんの名前をみつけた。

Tさんはサンフレッチェの熱心なファンで、私が広島支店に勤務していたころからよく観戦に行っていた。
ほとんど毎試合行っていたようだから、おそらく当時からシーズンチケットを持っていたのだろう。
ことあるごとにサンフレッチェ愛を語っていた。

そんなTさんの名前を電光掲示板にみたとき、なんだかうれしかった。
Tさん、まだファンをやっていたんだ。
Tさんの知らない間に、私もサンフレッチェのファンになったんだよと心の中でつぶやいた。
そしていつかスタジアムのどこかで会うこともあるかもしれないなと思っていた。

それは突然やってきた。
今シーズンの開幕戦が満員の新スタジアム、エディオンピースウィングで行われた。
私は長男とふたりで観戦した。
開幕戦を2-0の勝利で飾り、興奮冷めやらぬ中帰ろうとして席をたち階段をのぼっていたときだ。
「あれ、きりたにさん?」
なにげなく目をやった先に座っていた女性と目が合ったと思ったら、そう呼ばれた。
Tさんだった。
わたしたちの座っていた何列かうしろのすこし横でTさんは観戦していたようだ。
どこかで会うかもしれないなと予感こそしていたものの、いざそうなってみると、現実のこととは思えなかった。
それよりもTさんのほうが驚いたと思う。
2013年の3月に福岡で会社を辞めて以来、なんの音沙汰もなかったきりたにが今目の前に現れたのだから。
広島にいたことも知らないはずだし、ましてやサンフレッチェのファンとしてせっせこせっせこスタジアムに足を運んでいるなんて、そんな可能性のかけらすら考えたこともなかっただろう。
私たちは10年以上ぶりの再会を喜び合った。
今日のところは、再会しただけでお互いの近況なんかを共有する時間はなかったけれど、今後ゆっくりとお話しできたらいいなと思う。
幸い年間指定席も近いことだし、これも何かの縁なのだろう。



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