カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.10.5(木) 『クリスマスの贈物』

朝、シャワーを浴びようと脱衣所で服を脱ぐ。
浴室に入ろうとしたところで、シャツを準備していないことに気がついた。
真っ裸のまま寝室にシャツを取りに行く。
チェストを開けごそごそとやっているところに、娘を幼稚園に送った妻が帰ってきた。
裸で服を漁る男は焦りながら「おかえり」と言った。
「あー、服を準備してなくて……ごにょごにょ」
秋っぽい色のシャツを取って、浴室へ向かう。
シャワーを浴びる。
シャンプーをして、コンディショナーも流した後、またシャンプーをしてしまった。
いつもわからなくなる。
シャンプーはしたのか。
コンディショナーはしたか。
どちらもしたような、どれもやってないような。
たった今のことなのにわからなくなる。
なんだこれ。
仕方ないのでもう一度コンディショナーをした。
つやつやになっていてほしい。

今日は、野暮用をいくつか済ませ帰宅する。

適当に本を読む。
少しずつ読み進めている山川方夫の『愛のごとく』から「クリスマスの贈物」を読む。
4歳の息子を海の事故で亡くした夫婦の話。
クリスマスが近づく中、妻は夫に別居を切り出し、旧友の住むアパートで暮らし始める。
イブの夜、街中がクリスマスに彩られる中、妻は街を歩く。

だが、彼女だけは、すべてのプレゼントに関係がなかった。くれる相手もなく、贈る相手もない。買うことも、もらうこともなかった。彼女は、一人ぼっちだった。不意に、それが不安だった。街にひしめき、笑いさざめく無数の人びとの中で、そんなプレゼントで結び結ばれあった、他のあらゆる人間たちの中で、彼女は自分がかれらとは無関係に、一人きりでだけ生きているのを感じていた。でも、どうして私にだけ、プレゼントは関係がないのだろう。どうして、私にだけ、愛する人がないのだろう。……愛するものの不在が、悲しみというより、はじめて自分が消え失せたような恐怖で、良子の胸に来ていた。

出典:山川方夫「クリスマスの贈物」(講談社文芸文庫ワイド『愛のごとく』所収)

アパートに帰った妻のもとに花束が届く。
そんな話だ。
人生の絶望と希望が同時に描かれるような作品だ。
この短編、オムニバス形式になっていて、他のクリスマスプレゼントにまつわる話がいくつか連なっている。
それについてはまた明日以降読むことにする。

夜のジョギング。
走りやすい季節になった。
山の端に見えた月がどんどん高度を上げていく様子をみながら走った。


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