カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2024.2.13(火) さして重要でない

定休日。
買い物とこまごまとした野暮用を済ませる。
夕食で使う用の豚肉を買い忘れたことに気付き、娘を迎えに行く妻に買い物を頼む。

あいまあいまに伊井直行『さして重要ではない一日』を読む。
会社員の主人公が会議で使う資料の印刷ミスに気付き、差し替えたいが原本を紛失してししまう。
紛失した原本探しの一日を追った話だ。
確かに重要ではない一日が描かれるが、小出しに提示される主人公を取りまく周辺の情報から、主人公の人物像が浮かび上がってくる。
すべて説明されないの情報の余白に、想像力が及ばざるを得ない。

二台のコピー機を操作するのを彼は暫く眺めていた。今までそんなことを感じたことはなかったのだが、それはとても奇妙な動作に見えた。コピーするページを新しいものに差し替えてボタンを押したあと、必ず空白の時を生じる。これは明確な長さを持ったある時間なのだが、何ごとかをするには短すぎるので、コピーをする人間は宙づりの状態でこの空白が過ぎ去るのを待つしかない。

伊井直行『さして重要でない一日』(講談社文芸文庫)

奇しくも夜、息子にコピーを頼まれた。
なにやら鉛筆で書いたものをコピーして友人たちに配布するらしい。
コピーのボタンを押しながらこの一節を思い起こし、宙づり状態に身を委ねた。

さして重要でもない休日はかくして終わっていった。