カフェオレの泡

浮かんでは消えていく泡のようなもの

【読書日記】2023.4.18(火)柿内正午『差異と重複』、ZARD『TODAY IS ANOTHER DAY』

書くことがない。
そういうときは「書くことがない」と書けばいい。
遠い昔どこかで見た気がする助言に従い、書き始める。
そもそも毎日毎日、書くに値することなどないのだ。
だからこうしてどうでもいいようなことを日々、書き連ねている。
そして思う。
今日は昨日と違う日だったなと。
Today is another day.
こんな言葉あったけなと思ってGoogleで検索してみる。
1996年に発売された、ZARDの7枚目のオリジナルアルバムのタイトルが『TODAY IS ANOTHER DAY』だった。
せっかくなので聴いてみる。
こういうときの音楽配信サブスクリプションは便利ね。

名曲ぞろいだった。

1曲目、「マイフレンド」。
確か小学校5年生の頃だ。
朝の会だったか、帰りの会だったかで、月替わりで決めた1曲をクラスのみんなで歌うというコーナーがあって、この曲がそのうちのひとつに選ばれたことがあった気がする。
気がするだけで違うかもしれない。
なんにせよ、とても流行っていた。
スラムダンクのエンディングテーマだったらしい。

2曲目、「君がいたから」。
FIELD OF VIEWへ提供した楽曲のセルフカバーだ。
坂井泉水の透き通る声が切なくも心地よい。
もともと、この曲は好きだった。
叔母と従姉に初めて連れて行ってもらったカラオケで、別の従兄が歌っていたことを思い出す。

アルバムにはFIELD OF VIEWへ提供したセルフカバーが、この曲を含め3曲収録されている。
あとの2曲は「DAN DAN心魅かれてく」と「突然」。
夏の海岸通りへの憧れを抱いたのは「突然」だった。

こうやって、どうでもいいことを思い出したり、初めて聴く曲に新鮮さを覚えたり、また知っている曲でも聞いたことのない音が鳴っていることを発見したりしながら、アルバム一枚を聴き通した。
4曲目の「LOVE ~眠れずに君の横顔ずっと見ていた~」が良かった。
少しはねたリズムに、少しだけモタり気味の歌がいい。
辛いのに無理して明るく振る舞う少女を思わせるような曲だった。

LOVE 眠れずに 君の横顔 ずっと見ていた
いつの日か時を止めて 思いっきり愛したいよ 体じゅう
時代の速さに遅れてもいいよね
不器用でも 君と生きていきたい
「LOVE ~眠れずに君の横顔ずっと見ていた~」

時をとめることはできないのだ。
月日は百代の過客だ。
だからこそ、一日一日、その日そのときを大事にしたい。
そしてその大事にした昨日と今日が違う日であることを教えてくれるのが日記だ。

一日として同じ日はない、というあまりに当然のことすらなんだか忘れてしまうようで、日記を読み返すと、確かに全部ちがう日だなあということがよくわかる。同じようなことの繰り返しでも全く同じということはなく、その微妙な差異が積もり積もっていつのまにか見知らぬところにまで辿り着いていたりするものだ。

柿内正午『差異と重複』より

柿内正午氏の『差異と重複』を毎日少しずつ読み進めている。
二段組、約800ページにわたる日記本。
上段に2021年、下段に2022年、2年間の日々が綴られている。
コンセプトがユニークで、見た目も内容も圧倒的な迫力の日記だ。

これを読み終えるのにあとどれくらいの日を要するのか見当もつかない。
前著の『プルーストを読む生活』も控えているというのに。
他にも読まなければならない本はたくさんあるというのに。
罪な書き手だ。

今日読んだ中では、2021年1月11日の日記が面白かった。というか良かった。
日記を書くことについて書いたものだが、この良さを伝えられないのがもどかしい。
引用するには長すぎるし、かといってかいつまんでも伝えきれない。
「要するにこういうことを言っている」と言ってしまうと、こぼれ落ちていくものがあまりにも多くなる。
この要約のできなさこそが日記の魅力なのかもしれない。

今日も明日も明後日も、要約できない日々を送っていく。
人生とはそれの繰り返しだ。
Today is another day.